【2024年】ドイツ・ワーホリ 生活編「ドイツ語ノートNo.1――文法用語はドイツ語・日本語の両方で覚えとく」

渡航前に少しだけやった(ドイツ語検定3級)――しかし・・・

大学では、第二言語はドイツ語ではありませんでした。フランス語です。しかし、仕事の空き時間や休みの日に独学で1年くらいコツコツ積み上げて、渡航前になんとかドイツ語検定3級に合格しました。私が通ったベルリンの語学学校では、事前にクラス分けの簡単なウェブテストを受けておきます。そして、レベルに合った適切なクラスを割り当ててもらえるというわけです。

割り当てられたのはB1(ベー・アインツ)のクラスでした。受付の人に、英語で「二つのオプションがあります」という説明を受けたのですが、それぞれが何を意味するのかわからなかったので、

"I choose a first option! "

と、とりあえず答えました。 それで受けてみると、授業の初めから終わりまで、何を言っているのか一つもわかりません。初日から心が折れました。自分の積み上げてきたものは何だったのか。そこから一か月は涙目で授業を受け続けました。

ギリ文法ならわかる――問題文も読めない

ただ、なんとか着いていけるものがありました。それが、文法解説です。『ゼロから始めるドイツ語―文法中心・新正書法対応』を1周しただけでしたが、それでも、どのような文法事項があるのかは把握していたので、「これはたぶん、あの文法事項を解説しているんだろうな」ということだけはわかります。

宿題(die Hausaufgabe(n)/ハウスアウフガーベ(ン))も初日から毎日かなりの量が出されました。問題文に、

Ergänzen Sie die Lücken im folgenden Satz.

とありますが、何を書いているのかわからないので、DeepL などを使って翻訳します。1問目を解くまでに、ものすごく時間がかかります。こんなことではどうにもならないと思ったので、クラスを下げようかと思いましたが、先生が熱意のこもった人である、ということはなんとなくわかったので、この人を信じて頑張ろうと心に決めました。

はじめはカタカナ表記でええやろ

結果的には、三か月で、C1(ツェー・アインツ)のクラスにまで進むことができました。B1とか、C1とか何を言っているのか、という人もいるかもしれませんが、これはCEFR(セファール)と言って「外国語の運用能力を同一の基準で評価する国際標準」のことです。詳しくは、この 文化庁の資料 をご覧ください。ただ、あくまで 参照枠"Framework of Reference" です。現実とは乖離があります。日本だと、「TOEIC 900点台」とかしか馴染みがないと思います。私も、ドイツに行く直前まで「せふぁーる?」という感じでした。しかし、みんなこの基準でものを言いはじめますし、試験やクラスもこれで分けられるのである程度は把握しておきましょう。読み方は、

A1(アー・アインツ)A2 (アー・ツヴァイ)
B1(ベー・アインツ)B2(ベー・ツヴァイ)
C1(ツェー・アインツ)C2(ツェー・ツヴァイ)

です。A1からC2にかけて、順に難しくなっていきます。あえてカタカナ表記をしてきました。過激派というか、こだわりの強い人だと、ドイツ語を学ぶときにカタカナ表記は参考にするな、という人がいます。日本でドイツ語を学ぶ人、というのはそもそも「こだわり強め」「もろもろ厳しめ」の人に偏る気がします。しかし、いきなり発音記号で理解したり、耳だけで聞き分けていくのは難しいと思います。はじめのうちは、カタカナ表記に頼りながら、どうして「カタカナ表記がよくないのか」わかるレベルになることを目指せばいいと思います。むしろ、カタカナ表記によって、それが日本語ではないという認識のもと、日本人は発語ができてしまいます。このメリットを取らないと日本語を母語とする者として、損であるとすら思います。もちろん、まったく正確ではないのである段階を超えたら、発音記号や音で理解していきましょう。

文法用語はドイツ語・日本語の両方で覚えとけ

さて、日本でドイツ語を学んだあとに、ドイツでドイツ語を学ぶことになったときに覚えておいたほうがいいことが、いくつかあります。そのうちの一つが文法用語です。私は、日本語とドイツ語の両方セットで覚えておくことを進めます。

文法用語は、ラテン語 (Lateinisch/ラタイニッシュ)がもとになっていたりして、辞書を開くまで意味がわからなかったりします。

……acrophobia がわからなかった人でも、「高所恐怖症」ならば、おおよそ何のことかは直ちに理解できるだろう。

 つまり英語の高級語彙では、このようにほとんどの造語要素がギリシャ語かラテン語であるために、自分が知らなかった語の大体の意味を、ただ見ただけ聴いただけで察することは、古典語の素養のない一般の人にとっては非常に難しい。
 しかし日本語のそれは造語要素のほとんどが、日常的な漢字であるために、たとえ初見の語でも、およその見当がつくのである。

鈴木孝夫『日本語と外国語』岩波新書、1990年、132頁、133~134頁

これは英語の例ですが、ドイツ語にも似たようなことが言えます。最低限覚えておいたほうがよさそうな文法用語の表を作りました。多いと思うかもしれませんが、安心してください。真剣にやっていたらそのうち嫌でも覚えます。

1格(主格)Nominativ (Nom.) ノミナティーフ
4格(対格)Akkusativ (Akk.) アクザティーフ
3格(与格)Dativ (Dat.) ダーディーフ
2格(属格)Genitiv (Gen.) ゲニティーフ
直説法Indikativ インディカティーフ
命令法Imperativ インペラティフ
接続法Ⅰ式Konjunktiv Ⅰ コンニュンクティーフ・アインツ
接続法Ⅱ式Konjunktiv Ⅱ コンニュンクティーフ・ツヴァイ
現在形Präsens プレーゼンス
現在完了形Perfekt ペルフェクト
過去完了形Plusquamperfekt プルス・クヴァム・ペルフェクト
過去形das Präteritum プレテリトゥム
未来形das Futur フトゥーア
単数der Singular ジングラール (ジンギュラールだった気もする)
複数der Plural (pl., Pl., Plur) プルーラール
比較級der Komparativ コンパラテーィフ
最上級der Superlativ ズーパラティーフ
現在分詞das Partizip Ⅰ パルティツィープ・アインツ
過去分詞das Partizip Ⅱ パルティツィープ・ツヴァイ
不定詞der Infinitiv インフィニティフ
現在die Gegenwart ゲーゲンヴァルト
過去die Vergangenheit フェアガンゲンハイト

私の先生が言っていた話ですが、先生がお医者さんに

「ご職業は?」と聞かれ、
「ドイツ語の先生やってます」と返したら
「へえ、どんなことを何を教えているのですか?」と尋ねられたので、
「うーん、例えば...Konjunktiv Ⅱとかですかね...」と言うと、お医者様は
「Konjunktiv Ⅱ? なにそれ知らんなあ」と答えたそうです。

日本語の文法用語だって、ほとんどみんな知らないか、忘れているかなので、こんなものは何の役にも立たないと思うかもしれませんが、外国語を学ぶ上ではやはり重要ですし、少なくとも私は授業でわかるのが文法事項の部分だけだったので、そこから何とか食らいついていくしかありませんでした。

1格、2格、3格、4格は手抜きじゃないか

はじめの部分の、「格」について、主格、属格、与格、対格はドイツ語を学んだ人でも聞き覚えがないかもしれません。古い文法書や辞書なら出てきます。私は、主格、属格、与格、対格というほうが、意味がなんとなくでも把握できていいと思います。少なくとも、1格、3格とかで教えるのは手抜きです。どうせならドイツ語の Nominativ とか、Dativ で教えてくれたほうがマシです。誰がいつからどのような都合で数字に変えたのか知りませんが、これはよくない教え方だと思います。

人気のケバブ屋で1時間並んでいるときに、前に並んでいたドイツ人の親子と雑談していました。

神田「このケバブのためだけに日本から来たんだぜおれは」
母「私もこのためだけにアメリカから移住したんやで」
神田「アメリカから?」
母「この子(20歳くらい?)は、ドイツ生まれドイツ育ちやけどね」
神田「今ちょっとドイツ語勉強してるんですよ」
母「私もドイツ語を勉強しました。ええと、ほら Plusquamperfektとかやんな!(息子に)Plusquamperfekt わかる?」
息子「なにそれ知らんわ」

 こんなふうに一つ、二つ覚えておくと、話のネタにもなります。なお、覚えるだけでは授業に着いていけません。ふつうに意味するところも理解しましょう。それは事前に日本で学ぶことができます。

 このブログでは、ドイツ語絶賛勉強中の筆者がわかったようなわからないような感覚で書いています。ほんとうに正確なことはちゃんとした先生に聞いたり、辞書・参考書・教科書で確認しましょう。しかし、現状ものすごくできるわけではない人の記録がいつか誰かの役に立つことを願います。