【ドイツ 演劇】Bark of Millions――2024年10月12日 ベルリナー・フェストシュピーレ Berliner Festspiele
Berliner Festspiele "Bark of Millions'' に行ってきた
観劇日:2024年10月12日
初演日:2023年10月20日、シドニー・オペラハウス
ベルリン芸術祭(Berliner Festspiele)では、年間を通していろいろな独立した展覧会と企画が実行されている。毎年五月に開催されるベルリン演劇祭(Theatertreffen Berlin)も、その一連のなかにある。2023年10月からは舞台芸術シーズン(Performing Arts Season)が始められ、今年はこのTaylor Mac と Matt Ray による、コンサートパフォーマンス Bark of Millions から始まる。2024年10月か2025年1月の間には、7つの演目が予定されていて、本作はそのトップバッターということになる(Der Haushalt sei auch Spitzenklasse…)。ヨーロッパ初演。会場は、Haus der Berliner Festspieleの大舞台(Große Bühne)で、収容人数は999人だが、ここでも15分前開場である。橋本裕介さんが、Künstlische Leitung/Artistic Director を務めていたので、早めに行きご挨拶に行く。 2019年のKIPPUでの面談以来だったのにもかかわらず、終演後、お話することもできて、とても勉強になった。
例によってというか、ドイツはおろか世界の演劇事情にまったく精通していないため、前知識完全ゼロ状態で観に行った。しかし、はじめにTaylor Mac からの、そんなこと気にしなくてもいい!という旨のメッセージがあったり、「私たちは歴史家じゃない」と前置きしたりして、このショーにどんなふうに向き合ったらいいのかをガイドしてくれるので、まあ、そんなことは別にいいか、という気持ちで客席に居続けることができた。4時間、途中入退場自由だったが、一度も席を立つことなく最後まで飽きずに見続けることができた。前から4列目の上手4席目であった。コンサートパフォーマンスなので、席が後ろになっても真ん中のほうがよかったのかもしれない。4時間のあいだ、自分以外の多くの観客は席を離れる者が多かったが、セットリストのジャンルが多彩なので同じような演出や楽曲が連続することはまったくなく、一つ一つの音楽に聞き入った。不勉強でたいへん恐縮なのだが、演奏された55曲においてTaylor Macは、クィアの歴史における重要な自分つや精神からその歌詞のインスピレーションを得たらしい。Mishima の名も出て、Seppuku を示唆する振付けもあった。ただ、いちばん印象に残ったのは、しかし、ショーのはじまりの演出で、ピアノが演奏され、Hidden, Straying, Darkness といった暗い印象を持つ単語が、斜幕の向こうで少しずつ見えてくるパフォーマーたちによって力強く歌われることで、これからはじまるショーに、八百万の咆哮 があると、期待を最高潮に高めてくれた。
そういえば、半年くらいは音楽を生で聴きに行ったりもしていなかったことを思い出した。音楽っていいよな、という至極当たり前のことを、大切にしながら聞き入っていた。ベルリンでやってそうなハードコアパンクのライブにも行ってみようかな。
観劇スケジュールを組んだのだが、人に話を聞けば聞くほど、これは行かねば!となる演目が増えていく。学生料金で観劇できるし、HPをメールで送ったらプロフェッショナルですということでもっと安くで観られる可能性もあるらしいのだが、身体は一つしかない。語学学校の課題もやらねばならないということで、現実的に計画してみると今のところ3か月すべて合計すると、20作程度観劇できそうである。さらに、先日タニノさんの作品を観劇したGennevilliers では11月に市原佐都子さんの『弱法師』が上演されるらしく、俄然再度パリ行きする可能性が出てきた。いちど行ってしまえばあとはなんとかできてしまうような感じがするところが罪深い。
また、20作で、二度のパリ往復を含めても、観劇に使う金額は10万円程度に収まりそうである。1作平均5000円の計算である。ヨーロッパでは「演劇だけが安い」。日本(京都)では「演劇だけが高い」。円安の状況で、演劇をたくさん観たら、トントンになるということなのだろうか。とりあえず、たくさん観なければ損である。