劇団辞めてドイツ行く(54)帰国まであと100日を切るーー2025年4月30日

 寝不足はよくない。金を貯めるために約2年、週5で続けたホテル夜勤生活の影響は深刻で、2時を遅い時刻と認識できず、「寝なきゃ」という気持ちになれないでいて、結局3時過ぎに寝ている。朝は7時半から8時頃に起きるので、睡眠時間は平均5時間くらいである。時折どっと寝てしまうのだが、あまりよくない生活である。さらにこの時期のベルリンは夜8時でもめちゃくちゃ明るいので余計に遅く寝るようになってしまう。何があっても0時を回ったら就寝モードに入るようにしよう。今日も観劇してきたが、1時間半ほどの演劇だったのに、とても疲れてしまった。なお、ベルリンの電車では居眠りしている人はめったにいない。日本よりは治安が悪いのもあるかもしれないが、最近流行りの睡眠学によると、日本人はとにかく眠れてないらしい。自分も例に漏れず、といったところか。そういえば市川先生、講義で「日本人の居眠りは社会問題だ」とか言ってたな。授業中にアンパン食べてる学生を突然指さして、「ちょっと、そこの君。君はじつに素晴らしい!!」、なぜかといえば講義で居眠りするくらいならアンパン食べてるほうがずっといいとのこと。

 演劇の感想は一つにつき約2時間くらいかけて書いているが、あまり推敲できていないので誤字脱字や日本語として意味が通っていない部分が多々あってちまちま読み返して、こそこそ修正している。やはりボーッとした状態だと修正点も増える。寝不足の影響が出ているのだろう。6時間くらいは寝たほうがよさそうだ。

 今週末からテアタートレッフェンがはじまる。ベルリンに来る前は自分にとってもかなり重要な演劇祭と考えていたが、現実的なところが見えてきた。まずふつうに予約ができない。予約開始時刻になると、即座にほとんどの席が売り切れる。5G回線にしてやっと戦える。幸い、まだベルリンのなかでも中心地にいたので、5Gの電波がキャッチできて、3作予約できた(ケイティ・ミッチェル演出、原サチコ氏出演の『ベルナルダ・アルバの家 Bernarda Albas Haus』、マクシム・ゴーリキー劇場の 『我らがドイツの御伽噺 Unser Deutschlandmärchen』、ピナ・バウシュによる『Kontakthof - Echoes of '78』)。スピードテストくらいやっておいて、いちばん電波状態のよい場所や方向を確認しておけばもう少しマシだったかもしれないが、とりあえずこういう現状がわかったのはよかった。トレッフェンのためにと、空けていた5月2週目がぽっかり予定が空いてしまった。

 4月頭にはシャウビューネ劇場で FIND というフェスティバルがあった。そして4月の末からはゴーリキー劇場でも100 + 10 – Armenian Allegories(アルメニア寓話)という演劇祭がはじまっている。100 + 10 とは、1915 年のアルメニア人虐殺から110年という意味である。当時のオスマン帝国によって、同帝国内での少数民族であったアルメニア人に対して計画的かつ組織的に実効された、とされる。「とされる」と付け足したのは、その継承国家であるトルコ共和国はこれについて国際的に非難されているが、認めていないらしい。日本も含めて世界中いたるところに、そういう歴史があって、その多くが解釈問題に持ち込まれている。ところで、ゴーリキーのこの企画は、FINDやテアタートレッフェンと比較するとだいぶ的を絞ったフェスティバルである。劇場ごとのいろいろなスタンスがあるのは興味深い。ゴーリキーはたぶん、ドイツ語が母語ではない俳優が比較的多い。作品に英語が入ることもよくある。またセリフのスピードもいちばん早いと思う。そのためなのか、ドイツ語を聞き取れないことが多々ある(自分調べではもっとも聞き取りやすいのはドイツ座の俳優たちのドイツ語である)。

 もうじき5月末まで暮らす新居に移る。引っ越しは2回に分けることにした。荷物が多い。語学学校が終わってしまうので、ここからはまた独学でドイツ語を勉強し、ゲーテC1合格を目指す。5月は語学学校のテキストの復習とモデルテストをやってみて現状を確かめ、6月からテスト対策、7月にC1を取れれば最善である。モデルテストで厳しそうなら7月はB2を目標にする。C1クラス、わからない単語が多すぎる。聞いたところによると、

テルクB2>
ゲーテB2>
ゲーテC1>
テルクC1>
テルクC2>
ゲーテC2

の順に難しくなるらしい。今のクラスはテルクC1に合わせているようで、テキスト(Kontext)のなかでも、「テルクC1試験では以下のようなことが問われます」などとはっきり書いてある。このテキストはやや高負荷だが、都合がいいと思って残っている部分をやろう。DUSSMAN に行くとほかのテキストに興味が出てしまうのだが、あまりあれこれたくさんテキストを持ってしまうのは勉学においては悪手である。また、移動のことを考えても、荷物を多くできない。テキストは授業用と問題集がそれぞれある。ひとまず問題集に取り組もう。そしてすでに購入したテキスト(リスニング兼リーディング用)をさらに1ヶ月くらいかけて終わらせたい。観劇もなるべく続ける。ここは5月後半と6月の状況次第である。8月5日の帰国日が迫る。金がないのは勉強に集中するためだと思い込もう。戯曲も書き進めたいし、帰国後即稽古開始予定の『桜の園』演出についても考えねばならないことが山積みである。

 こんなことになるとは想像もしていなかったが、なんだかんだ楽しくやっている。行き当たりばったり続きだが、少しでも成長して帰国しよう。