【ドイツ 演劇】Always Carrey On(カレブ・エルドマン『オールウェイズ・キャリー・オン』)――2025年3月28日 ベルリナー・アンサンブル Berliner Ensemble
演出:Malin Lamparter
観劇日:2025年3月28日
初演日:2025年2月22日
会場:Werkraum
上演時間:1時間25分(休憩なし)
2日連続でベルリナー・アンサンブルに来た。昨日は大劇場で1984を観劇。本日も上演中であるが、私は werkraum(ワークルーム)という小さな会場に入る。Theatre E9 より一回り小さいが、アゴラよりは広く、奥行きが感じられる。
ジム・キャリーを題材にしたこの劇は、役に入り込むタイプの俳優の葛藤をわかりやすく描く。
>> Ich war….. allein. <<「私は……独りだった……」
というはじめのセリフで、その主題の軸が明白になる。俳優は3人いて、1人が男性、2人が女性なのだが、全員服は同じデニムシャツにブーツカットされたデニムパンツとウェスタン風の出で立ちである。それぞれの役が必要なくなると、砂漠のような床のうえにただ転がるだけになる。
これくらい小規模の会場になると、俳優と客席の距離も近く、基本マイクなしの演技を観ることができる。大劇場とは違ったセリフの聴こえ方である。ドイツ語の勉強にはこっちのほうが実践的なのかもしれない。もちろん、英語字幕はなかった。細かい動きの不安定性が気になってしまった。ここの動きは演出されていて、ここはされていないのだろうなと思われる、継ぎ目とでも言うべき部分が散見された。むしろ小規模になると、どうにも縫いしろというものは目立ってしまうものなのかもしれない。これを避けようとするならば、身体表現を徹底して様式化するしか選択肢がない。ベルリンでどっぷり大規模な会場での観劇を続けることができたおかげでわかったことである。日本の観劇料金はどうにも高すぎる。ある一定の規模を超えると、認識の仕方に変化が起こるのかもしれない。
最後の場面にマスク(演:LiLi Epply)に引き留められながらも、ホスト(演:Gabriel Schneider)が、意識を遠のかせて、舞台の外に出て行く。何かを演じることに対して、別れを告げるような幕切れだった。一時、このホストがコーヒーを淹れて客席に上がってくる場面があって、舞台上では何も起こらない。「これ何の時間?」という時間は、人物の頭のなかの呆然自失とした瞬間を描いているような印象だった。
ゴーリキーのSTUDIO Я(スタジオ・ヤー)、ドイツ座のBox など新人作家向けの小さな会場が各劇場に併設されている。どのような経緯で彼らがここで発表の場を得るに至ったのかは何らの示唆をわれわれに与えるだろう。京都だと、ロームシアターにも三つの会場があって、ノースホール、サウスホール、メインホールと順に大きくなっていくが、若手がノースホールで作品を上演できるチャンスは限りなく小さい。なお、本企画は、若手演出家のためのプログラムとのこと(Residenzprogramms für junge Regie WORX)。なかなか充実している。