【ドイツ 演劇】Method (コルネル・ムンドツォ演出、カタ・ウェーバー作『メソッド』)――2024年11月3日 フォルクスビューネ劇場 Volksbühne
「映画を演劇化するとき」
演出:Kornél Mundruczó(コルネル・ムンドルツォ)
脚本:Kata Wéber(カタ・ウェーバー)
観劇日:2024年11月03日
初演日:2024年10月06日
マクシム・ゴーリキーで、MOTHERS—A SONG FOR WARTIME(Marta Górnicka/マルタ・グルツニカ)という演目があって、激推しいただいたのだが、先にこちらの予約を取ってしまっていたのと、Volksbühne での観劇数がまだ少なかったためにこちらを選ばざるをえなかった。短い宣伝映像が、シュレーフ演出による『スポーツ劇』(イェリネク作)を彷彿とさせてたいへん興味深かった。京都から出てきた田舎者にとってこれだけ選択肢があってそれらが競合するというのは、驚くべきことである。
マルタ・グルツニカ氏は、ポーランド出身とのことだったが、こちらはハンガリー出身とのことである。いわゆる「東欧」でひとくくりにしてしまいがちだが、それぞれに独自の文化・歴史があって興味深いのと同時に、沼にはまりそうになってしまう。
さて、本作の大まかな流れは、「SF映画を撮影している現場」が、まず舞台で提示され、やがて現実と非現実の境があいまいになって、狂人化した老俳優(Martin Wuttke)が暴れまわるというものであり、最後には別の生き物に変貌していた。今回、とくに感銘を受けたのは、ホラー映画のやり方を、演劇に導入しつつ、さらに「恐怖を与える」という目的から「笑いをもたらす」という目的に転換していた点である。狂人化した老俳優が、他のキャストやスタッフを殺害する場面は、あからさまな「フィクション」が、宇宙船のセットのなかから映像を介して実況されることで、ちょうどよく笑える塩梅に調整されていた。
演出・脚本の両名は、映画も撮っていて、本作にも、『エイリアン』や『シャイニング』などのオマージュと思しき場面が多くあった。しかし、例えば、「思いもよらないところ(画面外)から襲われる」という表現は、映画では一般に「恐怖」をもたらすためのものだが、演劇でこれを「直訳」するのは困難である。こうした問題は、日本で飽きるほど示されてきた。それぞれのメディアの特性と、作品の特性を、仔細に検証していないという印象の「映画化」「演劇化」が乱発され、原作厨は石を投げる。日本における「〇〇化」はかなり殺伐としている。にわかアニメファンでも、「待望の実写映画化!!」に対してはいつも身構えてしまう。これだけ自由な発想の逆置ができるのなら、もう少し多くの作品が愛される可能性が増すのかもしれないと思った。