劇団辞めてドイツ行く(22)テスト合格してしまった/語学学校の学生証は使えないかもしれない――2024年9月27日
テスト合格してしまった/語学学校の学生証は使えないかもしれない
今週は学生証の受け取り、翌日にテスト、そのまた次の日に Anmeldung (住所登録)に成功と一つの区切りみたいになった。B1のテストは、100点満点中64点で、合格してしまった。
ちゃんと聞くのを失念してしまったが、おそらく60点が合格ラインなのだろう。ギリギリである。事前にぜんぜんだめだと考えていた、話す Sprechen が思っているよりも得点があって、やや自信のあった書く Schreiben が半分以下だった。話す Sprechen は基準がかなり甘め、書く Schreiben は減点がしやすいので、文法ミスの数が多ければそれだけマイナスになるということで厳しめである。読む lesen は○/×/根拠なしの3択問題が、14点満点中11点と健闘したが、文脈から単語の意味を判断する問題が、6点中2点と、足を引っ張る形になった。また、hören はやってるときからチンプンカンプンだったので、正解・不正解を見せられてもどうにも復習の仕様がなかった。
やってるときは「こんなの、8割は最低でもできないとダメだろうな」と思い、そしてそれにまったく到達できないのが見えていたので、もう一度B1のクラスを受けなければならないだろうなと思っていたのだが、結果的に合格ラインに到達してしまった。
恩師が、Perfume検定試験を受けた直後のゼミで「1問だけわからなかった。あんな簡単なの全問正解じゃないと不合格に決まってる。かしゆかが使ってるドライヤーとか常識なのに!、クソッ」と悔しがっていたのを思い出す。全然熱量から地頭から彼と違うわけであるが、あのときの彼の気持ちが少しだけわかったような気がしないでもない。
来週からB2のクラスを受講できる。もちろん、B1をもう一周するということもできないわけではない。しかしながら、いずれにせよ学校が提示する基準は満たしたのだから、このままB2に進んでしまってまたしんどい思いをするほうが今後の自分のためになると思うので、段階を上げてしまおうと思う。3か月で、B2にいければ良し、C1にまで進められたら御の字くらいに思っている。
さて、観劇のために学生証を手に入れたわけであるが、語学学校が発行する学生証は、学生証としては限定的にしか使えないようである。学生であれば、座席にかかわらず、多くの劇場で「9ユーロ=約1500円」にまで割引される。演劇関連の大学生なら、さらに割引されて「5ユーロ」らしい。年齢が30歳以下なら、学生でなくても割引がきく制度があるようで、とにかく学生や若者に優しい。しかし、今自分は微妙な立場にある。公共交通機関では、語学学校の学生証は使えないことが多いという情報は散見されるが、劇場でどうなのか、ということは情報がなかった。語学学校に通いながら、劇場に行くという者、それもすべて自費で、という条件下のものは少ない。留学でもなく、文化庁からもセゾンからも援助なし、パトロンがいるでもなし、実家が太いわけでもない、「ふつうの人間」が、外国で優雅に観劇することは、円安も向かい風になってかなり難しいのが現状である。日本の劇場よりはるかに安い価格といっても、60ユーロを毎週ボンボン使えるような立場にはない。小さい劇場や大きい劇場のなかの小さい会場なら、なんとか通えるのかもしれないが、もし語学学校の学生証が、各劇場で有効なのであればかなり助かるし、3か月の間にたくさん演劇を観ておこうというモチベーションにもつながる。
とりあえず、思いついた劇場に問い合わせのメールを送り、回答を待つ。それ如何で、今後の観劇スケジュールが決まる。各劇場のサイトには、「有効な学生証が必要です」としか記述がなく、学生証の定義については記載が見つけられなかった。どの劇場も似たシステムを使っているようで、文言も一字一句同じだった。頼むぞ。
シャウビューネ Schaubühne で今週末 イプセンの『ペール・ギュント』を上演するとのことで、チケットを買おうと思ったがいずれの日程も売り切れだった。そのほかも「おっ」と思った作品は前日には売り切れになっていることが多く、ベルリン市内でかなりの数の劇場があるのにもかかわらず、かなり需要があるということだろう。
当たり前のことではあるが、京都よりもやっぱり規模があり、さすが首都といったところである。統計年に隔たりがあるが、データで見ると、京都の人口は147万人、ベルリンの人口は364万人である。なお、東京の人口は1418万人である。ベルリンの人口密度は、4,114人/km²、京都市の人口密度は、1,737人/km²、東京の人口密度は、6,444/km²であるが、こうしてみると数値からだけでも東京は異常な街であることがわかってしまう。ライプツィヒ出身のペーター・ゲスナー氏が、北九州にきたとき、同市は100万人都市なので劇場の仕事が絶対にあると踏んでいたらぜんぜん思ってたのと雰囲気が違ったという話を別の人から伺ったが、人口からして、ヨーロッパ基準なら東京にはベルリンの3倍くらい観劇人口があるはずと考えてしまうのも無理はない。これには当然文化的な差異があるので、今ここで何がいい、悪いとかをまだ判断することはできない。
ヨーロッパに行ってしまうと、「ヨーロッパマンセー」みたいな感じを醸し出してしまいそうになる。本人はそうは思ってなくても、気が付いたらそういう空気を作ってしまう。それで40、50代になって急に「能」やら「歌舞伎」やらを礼賛してみたりする。そういうノリに対してかなり嫌悪感があって、もうちょっと苦悩してからモノを言ったり作品やったりしろよ、と常日頃思っていた。できる限りの力で、語学的障壁を自力で取っ払って、そんな雰囲気にも抵抗していきたい。